国際津波防災学会

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設立趣旨

2011年、未曾有の災害をもたらした東日本大震災から、既に6年半が過ぎた。

我が国は、地殻の境界及びその周辺に位置し、常に、大規模な地震及びこれに伴う津波による被害を受ける危険にさらされている。2011年の大震災はその現実を改めて思い起こさせた。多数の人命を奪った東日本大震災の津波の惨禍を2度と繰り返すことのないよう、また、人々のかけがえのない生命と財産を守るため、我々はこれに対処する英知を速やかに結集しなければならないと考える。

津波は広域にわたり、国民の生命、身体、財産に甚大な被害を及ぼすものであり、国においてもハード、ソフトの両面から、総合的かつ効果的に津波対策を推進する(津波対策の推進に関する法律:2011年〈平成23)〉こととした。国、自治体などの行政、関係団体、企業等においても津波防災の重要性の認識が高まり、国民一人ひとりが適切な行動をとることの重要性も指摘されている。

このように津波による被害を少しでも軽減することは喫緊の社会的課題であり、近年の関心の高まりを受けて、さまざまな分野において関連研究が急速に進んできている。津波防災の実効性を担保するためには、複雑な発生メカニズムを持つ津波現象の科学的解明、法制度や地域社会、さらには人々の意識や行動といった社会科学的な角度からの検討や実務的な課題の解決、国民一人ひとりの意識の向上をあわせて行うことが必要不可欠である。言い換えれば、津波防災は、科学分野の最新知見、ハード、ソフト両面での防災対策、教育普及にいたるまで、幅広い分野を横断し、研究者だけでなく、行政に携わる人々、企業やNPOなどの実践家、関心のある人々など多くの参加を得て、科学的かつ総合的に推進されなければならない分野であるといえる。

しかしながら、これまで、日本だけでなく、国際的にも、各専門分野の中での議論、課題の検討は行われてきたが、分野間の連携は十分とはいえなかった。

本会は、こういった現状を踏まえ、研究者、技術者、政治家、防災行政担当者、民間事業者、教育、メディア関係者等の各界識者、NPOや活動家、関心を持つ人々を広く有機的に結びつけ、ハード、ソフト両面での津波対策につなげるための議論の場を設けるとともに、国民一人ひとりが迅速かつ適切な行動をとることができるよう、津波防災に関する知見を広く社会に提供しようとするものである。

また、第70回国連総会本会議(2015年〈平成27)〉では、11月5日を「世界津波の日」とすることを決議し、早期警報、伝統的知識の活用、より良い復興を通じた災害への備え、あるいは津波に関する意識向上などを進めることとした。

これは、1854年(安政元)11月5日に和歌山県を襲った大津波の時に、村のリーダーが村民を避難させるため、山手にある自分の田の稲むら(稲束)に火をつけて皆を消火に駆け上がらせ、この機転により多くの人命を救ったという「稲むらの火」の逸話に由来している。世界津波の日の提案では、我が国を始め142か国が共同提案国となったことが端的に示しているとおり、国際社会においても、津波防災の必要性は日本同様きわめて大きく、この分野で世界をリードする研究や実践が行われている日本からの情報発信の意義は計り知れない。

このため、本会は、「国際津波防災学会」として関連する科学、学術、技術などの研究開発分野の発展を図るだけでなく、防災対策の国際的な連携協力や教育普及、意識向上にも貢献することを目指す。

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