国際津波防災学会

Japanese | English

トップ > 学術集会 > 終了した学術集会 > 設立総会

終了した学術集会

「国際津波防災学会」設立総会

日時2017年11月11日(土)13:00-17:30(受付開始11:30、開場12:00)
終了後18:00から記念パーティ
会場富士ソフトアキバプラザ 5階「アキバホール」
東京都千代田区神田練塀町3
主催「国際津波防災学会」設立発起人会
会費無料(終了後記念パーティは実費1,000円)
チラシ「国際津波防災学会」設立総会開催のお知らせ

プログラム(2017年11月11日)

(1)学会設立挨拶
13:00-13:15ロバート・ゲラー(発起人代表、東京大学 名誉教授)
(2)会則、役員、活動について
13:15-13:30戎崎俊一(発起人、理化学研究所 主任研究員)
(3)来賓祝辞
13:30-13:40二階俊博様(自由民主党幹事長・国土強靭化推進本部長)
(4)研究発表
13:42-14:02国内外における津波研究と学会の動向
佐竹健治(東京大学 教授)
14:04-14:24津波防災に関連する法制と取り組む視点
武田文男(政策研究大学院大学 教授)
14:26-14:46日本は東日本大震災から本当に学んだのか −熊本地震、九州北部豪雨の事例から−
杉本めぐみ(九州大学 助教)
【コーヒーブレイク】
15:12-15:32津波防災の姿勢 −現場からの報告−
清水宣明(愛知県立大学 教授)
15:34-15:54「防災教育」の課題と可能性
−新リベラルアーツを核に据えた教育課程の研究開発とその可能性−
笠原正大(暁星国際学園ヨハネ研究の森コース 主任研究員)
15:56-16:16国際津波防災学会への期待 −3・11の経験を踏まえて−
宮本卓次郎(日立造船 顧問)
16:18-16:38相模湾・東京湾口部における海底地滑り −大正関東地震の水深変化から読み解く−
戎崎俊一(理化学研究所 主任研究員)
(5)来賓祝辞
16:40-16:50黒岩祐治様(神奈川県知事)
16:50-17:00相澤益男様(日本防災産業会議会長)
(6)クロージング・スピーチ
17:00-17:20津波防災意識の世界的な高まりを目指して
山中燁子(ケンブリッジ大学客員教授)

備考:

  1. 研究発表の時間配分は、講演16分、質疑4分となります。

佐竹健治
 津波は地震・火山噴火・海底地すべりなどの海域の地学現象によって発生し,ときには太平洋の反対側まで伝播し,海岸付近で増幅されて被害をもたらす.津波の発生・伝播・海岸でのふるまいについては,それぞれ固体地球科学・海洋学・海岸工学の分野で研究されており,その成果は地球惑星科学連合大会,地震学会,土木工学会海岸工学講演会などで発表されている.土木学会原子力委員会津波小委員会や地震調査委員会津波評価部会では,原子力発電所の津波評価技術や波源断層を特性化した津波の予測手法(津波レシピ)などを定めている.東日本大震災後,日本周辺には200点近くの海底水圧計が整備され,そのデータは気象庁に送られて,津波予報に役立てられている.国外では,IUGG(国際測地学・地球物理学連合)の下に,津波小委員会があり,隔年でシンポジウムを開催し,論文集も出版している.

武田文男
 東日本大震災後の主な津波防災関連の法制として、津波対策の推進に関する法律(制定)、津波防災地域づくりに関する法律(制定)、災害対策基本法(改正)、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(法律名称等改正)、強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法(制定)、消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律(制定)等が整備されている。
 関連法制を通じ、津波防災に取り組む視点を考えてみると、人命保護の最優先、避難の重要性、ハード・ソフトの多重防御、自助・共助と公助の連携(自助・共助の取組み拡大+公助の一層の充実強化)、住民1人1人の自覚、避難行動要支援者対策、消防団等津波防災の担い手の活動強化・連携・安全確保、法に基づく各種計画の策定、観測体制の強化、調査研究の推進、教育訓練の実施、災害教訓の伝承等を挙げることができる。
 今後、これらの視点に立ち、防災・危機管理能力を最大限に発揮できる津波防災体制の構築を目指すことが重要であり、本学会の設立が、人命の保護や国・地域の安全、津波防災への取組みの進展に大きく寄与することを願うものである。

杉本めぐみ
 2011年東日本大震災で南三陸町や大槌町など災害時に指令塔となる防災庁舎を含んだ自治体庁舎が浸水し、そこで職員の命が奪われた。防災庁舎の耐震化や浸水対策が日本の自治体の喫禁の課題になった。しかし、2016年熊本地震では八代市、人吉市、宇土市が倒壊の可能性が出るなど防災対策としての不備が顕著だった。この他にも津波の予想浸水域にある自治体防災庁舎は鹿児島県をはじめ九州内に散見している。
 また、インフラの整備だけでなく、避難所で生き残るための準備は進んだのか。熊本地震では避難所の数が圧倒的に不足し、車中泊を余儀なくされた市民が大勢出て、エコノミークラス症候群で犠牲者を出すという不安な状況を露呈した。
 内陸直下地震の熊本地震よりもさらに大規模なプレートのひずみを南海トラフ全域の想定で対応することになった日本の津波防災対策は総合的な視点で進められているのか。熊本地震と2017年九州北部豪雨の事例から今後の課題を検証する。

清水宣明
 南海トラフを起点とする大規模地震津波災害の対策強化が叫ばれて久しいが、被災最前線となる地域住民の現状をどれだけご存知ろうか。津波は垂直方向に比して水平方向への到達距離がはるかに大きく、しかもその水深とエネルギーは漸減するために、水平避難よりも垂直避難の生存効率が高い。しかし、そのような津波災害の特性を考えることも、東日本大震災の津波死メカニズムを理解することもなしに、未だに「とにかく逃げろ」といった精神的な避難指導が無批判に繰り返されている現状が対策の進展を妨げている。犠牲になるのは、そのような「とにかく逃げろ」ができない災害弱者であることが忘れられていないだろうか。ここでは、地域の災害弱者の命を守るための原則的な考え方と、それらを基に名古屋市や伊勢志摩地域で住民とともに取り組んでいる津波対策の実際を紹介する。現状を知る手がかりとしていただければ幸いである。

笠原正大
 東日本大震災の発生以降、人の命と営みを守る「防災教育」は、その重要性を改めて強調されるようになった。文部科学省「学校防災マニュアル作成の手引き」公開のみならず、多領域の学会において防災教育の必要性が説かれているのが昨今の状況である。
 一方で、防災教育の直面する課題が「防災に関する知識を、現実の災害状況に活用することは可能か」という点であることは疑いない。専門家の提示する知識を読み解き、現実に適用し、行動する能力の育成が、いま求められているといえよう。
 だが、教育の場で得た「知識」を現実の状況に応用することは、人間にとってきわめて困難な行動である。この問題は、「転移(transfer)」の困難性として、古くはE・L・ソーンダイク(Thorndike, E. L.)の報告以来、教育研究において指摘され続けてきた。特に、知的課題における「転移」の生じにくさから、知識理解を伴う防災教育では、その発生に一層の困難を伴うものと予想される。
 当報告では、本校の教育実践を事例に、知の創造過程に人間が参加する中で生じる「転移」の可能性を提示したい。防災における実践的リテラシー育成の方法を、ともにご検討頂ければ幸いである。

宮本卓次郎
 災害は、非日常の事象を原因として生じる甚大な人的、物的被害と定義することが出来る。非日常の事象に対して被害に至る中間事象の連鎖を分析して、事象連鎖を抑制することが、防災の合理的な方法である。これにより、津波に対しても人命を守る方法を見出すことが出来る。一方、行政の防災対策は、それなりの効果を上げているものの、画一的にならざるを得ず、これが災害に対する潜在的な脆弱性要因となっており、多様性を加味することが課題であると考えられる。これを補完する意味でも個人レベルでの対応の多様性を尊重することが重要であろう。懸念される東海・東南海地震などでは、東日本大震災と比べても被災者と非被災者の構成比が変わることから、個人の防災対策がより重要となる。これらのことから、津波災害に対する国民的な関心を高めること、柔軟な発想で防災対策の多様性を高めることが求められており、国際津波学会の発足がその一助となるものと期待する。

戎崎俊一
 1923年に発生した大正関東地震の直後に、水路部が相模湾の水深の調査を行い、場所により100メートルを超える大規模な水深変化が起こったことを報告した。陸上の地形変化は1、2メートルにとどまっているのに対し、海底ではその100倍近い変化がなぜ起こったのかが議論の的になった。地質学者の小川琢治は、この水深変化が大規模な海底地滑りによると指摘し、相模湾沿岸に被害をもたらした津波の原因と推定した。本講演では、水路部が発見した地震前後のこの水深変化は、相模湾内に堆積した軟弱な土砂層が地震の衝撃で流動化し、相模トラフ沿いに房総沖の海溝三重点まで一気に流れ下った結果と考えられることを示す。また、将来の関東地震において、東京湾口部においても同様の土砂崩れが発生する可能性とそれによる津波の発生について議論する。さらに、東京湾内に波及する津波の発生を未然に防ぐための予防的な対策を提案する。

ロバート・ゲラー
 今回、国際津波防災学会という学会により、津波防災に関する議論の場を設けることとしましたが、これはゴールではなく、スタートです。
 本会での学術的、科学的な議論を踏まえて、社会に対し有益な情報提供を積極的に行い、国、自治体などの行政、関連する団体、そして、家族、個人の一人ひとりが、津波防災の大切さを理解し、適切で具体的な行動をとることができる社会の実現に貢献していきたいと考えます。
 そのために、本会は、まず、議論の場を設けることからスタートしました。ここで議論され、検討された知見、知識は、津波災害を軽減することに必ず貢献できるでしょう。それは、日本の国境を越えて世界の津波防災への貢献にもつながるものと確信しています。
 津波防災の目的は、「人々の生命、財産を守る」ことです。言葉では簡単ですが、その実現、達成は容易でなく、また完璧な方法があるとは考えていません。しかし、可能な限り、よりよい方法、より完璧に近い対策を見出していくことこそ、本会の使命であります。
 津波防災は、数少ない研究者だけではできるものではなく、広く様々の立場の方々の力を合わせないと実現できません。
 われわれの活動にご賛同いただける皆様、是非多くのご参加、ご協力をお願いいたします。

山中燁子
 国際社会は、紛争やISの暴力に加え、先進国における大統領選やBREXITなど一連の選挙で、これまでの秩序や制度に対する不満が散見され、不安定さが増している。加えて、地震、津波、台風、洪水、山崩れ、竜巻、火山の噴火、森林火災等の自然災害が頻発。海に囲まれた日本は、歴史的にも、大きな津波に見舞われ、東日本大震災の惨事は、未だ、記憶に新しく、復興も道半ばである。津波を防ぐための学術的な進化は車輪の一方であり、人々の意識の中に「備えあれば、悔いなし」という日本の諺に基づく、防災意識の醸成がもう一方の車輪といえる。しかも、1775年のリスボン津波でも明らかなように、津波が一国の国力を大きく低下させた事例もあり、まさに、国際的な問題だ。平和構築の観点から、予防外交(Preventive Diplomacy)の論理が、自然災害にも当てはまる。日本の経験と知恵から生まれたソフトとハードのバランスの取れたresilienceを国際社会に伝え、世界各国で、学問・科学と人的連携を進めるためにも、本日の「国際津波防災学会設立」が大きな一歩となる。
 共に、前に向かって、歩きましょう。

関連団体

ページのトップへ戻る